古い素焼きの人形 首折れ
今回お預かりしたのは、長い時を経た素焼きの人形。
首と台座が破損していましたが、経年による味わいを損なわないよう、修理の方向性を丁寧に検討しました。
素焼きという素材は繊細で、表面の風合いや質感が一つひとつ異なるため、単に接着するだけでは元の佇まいを取り戻すことができません。
そこで今回は、合成樹脂を用いて欠損部分を成形し、顔料によって石のような素材感を再現することで、違和感なく自然な仕上がりを目指しました。
特に首の接合部は形状が複雑で、微細なズレが全体の印象を大きく左右します。
そのため、接着面の角度や厚みを細かく調整し、修理の痕跡が表に出ないよう、慎重に工程を重ねました。
年月を重ねてなお大切にされてきたお人形が、これからもそっと日常に寄り添い続けられるよう、心を込めて修復いたしました。